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沼地からの脱出 1 2 3

 胸の真ん中に、硬く重苦しいしこりがあり、もやもやとした痛みをもたらしています。それは、木の幹のような灰色をしています。温かみのある灰色ではなく、嫌な予感をもたらす不吉な色です。そのしこりは、生きるエネルギーを吸い取り、私を絶望の底へと陥れる力を持っています。これは警告です。この灰色のしこりに気がつかないでいると、それはじわじわと広がり、やがて、私の存在すべてを覆うまでに成長し、何週間もの、あるいは何ヶ月も続く、落ち込みと絶望の深みへと私を追いやります。そこには、何も得るものはなく、ただ空虚な孤独感があるだけです。

 ひどいうつ状態への落ち込みを繰り返す年月を経て、私はそのしこりの意味することがわかるようになってきました。そのしこりによって私の存在が奪われてしまわないように、まだエネルギーが残っているうちに、即座に、それを取り除かなければならないのです。

 一度に少しずつ、取り組み始めます。娘か誰か他の仲の良い友達にいてもらい、思いっきりわめき散らします。それで、しこりは少しだけ小さくなります。この世の住人であることへの思いと失望を吐き出し、彼らに聴いてもらいます。そうして眠りに落ちるか、散歩に出かける頃には、そのしこりは、さらに小さくなっています。

 この4年来の親友であるライトボックスに、まだ外が暗いうちに明かりをつけることから、一日が始まります。悪いニュースは飛ばしながら新聞を読みます。ライトボックスの暖かさが、私の気分を持ち上げてくれます。その日は“休みの日”にすることにします。リラックスし、深呼吸をし、気に入った音楽を聴きます。過去や将来のことにとらわれるのではなく、いま、現在を生きる時間にします。自分を労わるために、ヒノキの香り、ラベンダーあるいはバラの香りで満たされた温かいお風呂につかって、リラックスします。

 ずっと長いことやらずに放っておいた、キルトをするための時間もとっておきます。ひとつ縫いつけるごとに変化する、明るい色やデザインが私の目を楽しませてくれます。キルトをしていると、この世の中に心配すべきことは何もないように思えます。そうして、胸のしこりは、さらに小さくなります。

 すわり心地のよい、背もたれのついた椅子に座って、ハーブ茶を飲みながら、ずっと読もうと思っていた本を2〜3時間読みます。しこりは小さくなり、力が弱まっています。

 気分転換するために、犬と、元気が出るような散歩をします。一緒に歩いたり、走ったりして、そこに初めてやってきたかのように、森のなかや草地を探索します。そのころには、しこりは、ほとんど気がつかないくらいになっています。

 それからこの数日間の食事を振り返ってみます。たいてい、栄養にしっかりと注意を払っていなかったことに気がつきます。もう実際は違うのだけれど、最悪なうつ状態がやってくるのを待ち構えているかのように装って、簡単に準備できる、美味しい健康的な食事の材料を買いに行きます。にんにくとローストした黒オリーブなどを楽しみます。

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