HOME > WRAPの起源 > メアリー エレン・コープランドさんのエッセー
私たちにとってリカバリーの意味すること 1 2 3 4 5 6 7
 いわゆる精神症状の経験に関して、リカバリーが語られるようになったのは、つい最近のことです。私たちのように精神症状の経験を持つ人は、これらの症状は治らないと聞かされてきました。残りの人生を症状と共に生きなければならないだろうし、もし適切な薬が見つかればそれが効くかもしれないけれども、薬はずっと飲み続けなければならないだろうといわれてきました。これらの症状はだんだん悪化するとさえいわれた人も多くいます。リカバリーについてはなにも聞かされませんでした。希望についてもなにも。元気になるために自分でできることが話題にされることはありませんでした。エンパワーメントについてもまったくなにも。

 メアリーエレンはこう語ります。

 私が37歳で躁うつ病と診断されたとき、薬を飲んでいれば大丈夫だといわれました。ただし、薬は一生のみ続けなればならないけれども、と。私はその後10年間、ウイルス性腸炎によって重症のリチウム毒性が引き起こされるまで“大丈夫”でした。ですが、その後、私は薬を飲むことができなくなりました。それまで薬を飲み続けていたあいだ、どうしたら自分の気分にうまく対処することができるかを学ぶことができていたはずです。リラクゼーションとストレス軽減法や、なにか楽しめることをすれば症状が和らぐことを学んでいてもよかったはずです。もし、私の生活がそんなに忙しくて混乱していなければ、暴力を振るう夫と暮らしていなければ、私のことを肯定し認めてくれる人ともっと多くの時間をすごしていれば、私は元気でいられただろうし、このような症状を経験している人たちからのサポートが助けになることを学んでいてもよかったはずです。どのようにしたら厄介な感情や気持ちを楽にし、和らげ、それらを取り除くことさえできるのかを学べるのだとは、誰も教えてくれませんでした。たぶん、もし私がこれらのことを学び、このような症状を切り抜けてきた人たちと出会っていれば、医者が熱心に効果的な薬を探しているあいだ、幻聴を伴うような激しい感情の起伏を、何週間、何ヶ月、何年にもわたって経験することはなかったかも知れません。

 いま、時代は変わりました。私たちのように、これらの症状の経験を持つ人たちは、情報を交換し、症状のために夢や目標を諦める必要はなく、これらが際限なく続くものではないということをお互いから学んでいます。私たちは自分が自分の人生の責任者であり、前向きに進み、自分がしたいことをできるのだということを学んできました。とても重い精神症状の経験を持つ人たちが、いろいろな専門分野の医師、弁護士、教師、会計士、権利擁護運動家、ソーシャルワーカーであったりします。私たちは、親密な関係をうまく築き、維持しています。パートナー、両親、兄弟、友達、同僚たちと温かい関係を作っています。山登りをするし、園芸をしたり、絵を描き、本を書き、キルトを作り、この世界に好ましい変化をもたらしています。そして、すべての人に対するこの展望と信念を持ったときにはじめて、すべての人に希望をもたらすことができるのです。
次のページ >