リカバリーとリスクについて
一般に“精神病”と呼ばれる感情や症状は予測することが難しいために、私たちが“調子を崩しDecompensate”(私たちの多くにとって不快な言葉です)、自分や周りの人たちを危険な状況に陥れることを支援者は恐れています。支援者はもしこれまでのように保護的なサービスを提供し続けていなければ、人々はやる気をなくし、失望し、自分を傷つけるかも知れないと恐れます。ですが、人生にリスクはつきものであることを認めるべきです。自分の人生をどう生きるかについて選択を下すのは私たち自身であって、現実から私たちを守ることが支援者に任されているわけではないのです。
どのような強制的な治療についても反対する動きが広まっています。私たちのどちらも危険な状況を経験してきましたが、強制治療はどんなものであれ役に立たないことで意見が一致しています。強制的で、本人が望んでいない治療は、長期的には悲惨で損害が大きく、屈辱的で、究極的には効果がありません。しかも支持的で癒しをもたらす関係であるべきなのに、人を信頼できない状況へと人々を追いやることになりかねません。すべての人が自分の行動に責任を持っており、責任を取るべきだと思っていますが、クライシスプランのように、人間的で人を思いやるような手続きを作ることは、すべての人の関心事であると信じています。
リカバリーに焦点をあてたサービスであるためのガイドライン
次に述べる支援者のためのガイドラインは、抵抗と無気力を減少し、リカバリーのための努力の方向性を定めて促進させることに繋がるでしょう。
- 症状がいかに重くても、人は学び、変わり、人生の選択をし、生活の変化を引き起こすための行動をとることができる、同等の能力をもった、有能で、対等な人として接してください。
- 決して、叱ったり、脅かしたり、罰を与えたり、子ども扱いしたり、批判したり、見下したりしない一方で、人があなたに対して、脅迫的で、自分が見下されているようだと感じたときには、あなたがどのように感じるかについて正直に伝えてください。診断名、レッテル、その人がどのような人生を辿るかについての予測に焦点をあてるのではなく、その人がどのように感じているか、その人がどのような経験をしているか、その人がなにを望んでいるのかに関心を向けてください。
- 人々が自分で使ったり、彼らのサポーターの助けを借りて使うことのできる、簡単で、安全で、実践的、身体に負担をかけず、安価もしくは無料の、自分でできる技法や方法を紹介してください。
- アイデアやアドバイスを与えることを控えてください。フィードバックによって人々を責め、打ちのめされた気持ちにすることを避けてください。
- 個々人の違いを受け入れ、個人のニーズと好みに十分注意を払ってください。
- 計画作りや治療は、サービスを受けている人との真の共同作業でなければなりません。
- 子ども扱いするようにではなく、その人の持つ力と、とても小さな前進を認めてください。
- その人の人生の歩みは、その人自身によるのだということを受け入れてください。
- リカバリーへの最初の一歩として、その人の話に耳を傾け、語ってもらい、彼らがいっていること、望むことを聞いてください。彼らの目標は本当にその人たちのものであり、あなたの望むものではないことを確認して。あなたが彼らのために良いかも知れないと思っていることは、彼らが本当に望んでいることではないかも知れないということを理解してください。
- 次のような問いかけをしてください。「学習した無力感などのように、変化し、元気になるために妨げになりそうなことが、その人の生活のなかで起きていないだろうか?」あるいは、リカバリーの妨げになっている、なにか医学的な問題がないだろうか。
- 同じような経験をもつ人と関わりを持つことを奨励し、サポートしてください。
- 「精神症状を経験してきた人が進行するグループに参加することは、この人にとって役に立つだろうか?」と自問してください。
自らの人生の決定者はその人自身です。たとえ最高の技術を持った支援者であれ、誰も私たちのためにその仕事をすることはできません。それは誰もが自分でしなければならないことなのです。
※Shery Mead, Mary Ellen Copeland, "What Recovery Means to Us", 2000, Plenum Publishers, New York, NY を、著者の許可を得て、日本語訳にあたり短縮しました。訳:久野恵理